住宅のリフォーム現場で長年壁紙を貼ってきた職人の視点から見ると、6畳の部屋で「30メートルで足りる」という一般的な目安は、あくまで理想的な条件下での話に過ぎません。私たちがプロとして現場に入る際、お客様から「窓が大きいからもっと短くていいはずだ」と言われることが多々ありますが、実は開口部の有無は壁紙の必要メートル数にそれほど大きな影響を与えないのが実情です。なぜなら、壁紙はロール状のものを縦方向に貼っていく資材であり、途中に窓があったとしても、その列を埋めるためには天井から床までの長さが必要だからです。窓の部分を切り抜くことにはなりますが、その切り抜いた端材を別の場所で継ぎはぎして使うことは、仕上がりの美観を損なうためプロは絶対に行いません。継ぎ目が多ければ多いほど、数年後にそこから壁紙が剥がれてくるリスクが高まるため、贅沢に1枚の帯を使い、不要な窓の部分を切り捨てるのが正しい施工なのです。また、私たちが6畳の現場で壁と天井の全面貼り替えを行う際は、最低でも50メートルは現場に持ち込みます。これには理由があります。古い壁紙を剥がしてみると、下地の石膏ボードに大きな穴が開いていたり、段差が激しかったりすることがあります。下地調整に時間がかかると、壁紙ののりが乾いてしまい、貼り直さなければならない事態が起こり得ます。また、コンセントやスイッチプレートの周り、さらにはエアコンの配管周りといった複雑な箇所では、どんな熟練工でもカットをミスする可能性があります。そうしたとき、手元に十分な予備がなければ、その日のうちに工事を完了させることができず、お客様に不便を強いることになります。プロが35メートルや50メートルという数字を提示するのは、単に多く売りたいからではなく、どのような不測の事態が起きても、完璧な仕上がりを保証するための責任の表れなのです。DIYで挑戦される方へのアドバイスとしては、プロが使う量の1.2倍、つまり壁面だけで40メートルは用意しておくべきだと伝えています。余った壁紙は無駄になると思われるかもしれませんが、将来、家具をぶつけて壁紙が破れたり、子供が落書きをしてしまったりした際の補修用として、これほど心強い味方はありません。数メートルを節約して、後からロット違いの色ムラに悩むよりも、最初に十分な量を確保して、心の平穏と美しい部屋を手に入れる方が、結果としてコストパフォーマンスは高くなるはずです。